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本質的にちくらぎ

文芸サークル「本質的にちくらぎ」のページです!

テキスト系同人誌(文章系同人誌)のレビュー企画|第三号――NEKOPLA斎藤『日常想像研究所2』

どうでもいい疑問を、適当に考える。
――キャッチコピー 

 

 今回は大手個人サークル「NEKOPLA斎藤」(@kawausokawauso)さんの、『日常想像研究所2』をとりあげたいと思います。勉強になるところが多く、読んでいて楽しいです。

 

※本稿に書かれていることは「らららぎ」個人による感想の域を越えず、本サークル『本質的にちくらぎ』とは関係ありません。

 

購入動機と星型レビュー

【購入動機】
(1)表紙がかわいい
(2)目次が見やすい
(3)いきなり出し惜しみなしで面白い
(ここまで約20秒かからず即購入――たしか400円)

 

【評価】
装丁:☆☆☆☆
用紙:☆☆☆☆☆  *淡クリームキンマリと思われる用紙、最高です。
編集:☆☆☆☆
図表:☆☆☆☆
校正:☆
目次:☆☆☆☆   *個人誌ならではの抜群の見やすさです。
本文:☆☆☆☆   *機構的な感じがいやらしくなく素敵です。
ミニ:☆☆☆
後書:☆☆
奥付:☆☆☆

 

ポストの時刻表

鉄道時刻表からは列車の運行が想像できるのと同様に、ポストの時刻表からは取集車の動きが想像できる。それに何の意味があるのかは分からない。ただ、我々の知らないところで、取集車は毎日決まった時間に運行しているのだ。時刻表どおりにポスト(駅)を巡って、郵便物(乗客)を載せているのである。その素性を知りたいとは思わないだろうか?(p.6)  

 

 サイトの「誰なんだお前は」を読んだら、「JR全線完乗者」と書いてあり、ただものではないと思っていたのですが、ここで「取集車」と表記するところにただならぬ気迫を感じます。読みかたは「しゅうしゅう-しゃ」です。

 

ただ、地域によっては律儀に「一分単位」で時刻が書かれているところもあった。感動的である。そんなに正確に書いちゃって大丈夫なんだろうか。(p.7-8) 

 

 なんて面白い世界なんでしょう…。やばいです。はまりそうです。はまりそうなので早速「ポストマップ」というサイトを見に行ったら、これがまだ煩雑ながら面白いのです。くだんの一分単位の時刻表の話が出ているところをピックアップしましょう。

 

残りわずかの未発見ポストを発見すべく、取集車を追いかけた経験のある方もいらっしゃると思います。そこで適当な場所のポスト付近で張り込んでいるのですが、取集車が時間通りにくるためしがありません。10分単位で表示している支店で「13:30」ならば、13:25~13:35に来るはずだと思うでしょう。ところが、たいていの場合10分以上遅れてくる。支店出発の時刻はだいたい決まっているはずだから、そもそも取集作業をしながら回るために組まれたダイヤではないのだろうか。あくまでも取集時刻は目安だし、バスの通過時刻と違ってじっと待っている必要はないから実用面では差し支えないのかもしれない。でも、30分以上の遅れが常態化しているような取集ダイヤは無理があるといってもいいだろう。まして1分単位で取集時刻を表記している支店は、その時刻の根拠が知りたいものである。「ある日の取集時刻」を記録してそのまま取集時刻としているにしては無理があるように感じます。交通事情による遅延があまりなさそうな天気のよい平日の午前中などを狙って「実際の取集時刻」を調べてみると面白そうに思う。最初から追っかけていると不審がられるので、5か所程度ごとに先回りしつつやってみると傾向が分かりそうだ。――みかちゅう「なぜ取集車は時刻どおりにこない」 (2008)

 

市原局は5区の取集コースがあります。取集時刻表に26年7月18日改正された掲示がありました。市原局は隣の姉崎局を調査の機会に、何ヵ所か周りいずれも取集時刻が変更され、ポスト番号が変更され、取集コースが組み変えされてるポストもありました。特徴は1分単位で取集時刻が設定されています。コンビニポストにもポスト番号が記載されています。おそらく、他のポストも取集時刻・ポスト番号が変更されているかと思います。後もう一つ、取集時刻表にあるポスト番号は「1区-10」と感じで掲示されているのですがポストマップに編集されている市原局のポスト番号は「1-10」とか「1区-10」と編集されているのが混在しています。割合的には「1-10」て編集されてる方が多いです。意味合い的にどちらでも、同じなんですが・・・・・。個人的には、統一した方がいいかなと思うのですがどうでしょうか? 年明けから、合間みながら周る予定なので、現地調査したポストから、実際に掲示されている「1区-10」と感じ編集したいと思います。改正が去年なので、取集時刻表が剥がれてなければいいけどどうやら。年明けから周る予定でしたが、千葉/八千代局(掲示更新されポスト番号が6桁表示に)を先に周りたいと思います。――hiroaki32694「千葉県/市原郵便局・取集時刻改正」(2015) 

 

 他にも、地元のポストを検索したら、もう既になくなってしまったコンビニなどの写真も出てきて、かなり懐かしくなりました。ポストは駅である、という斎藤さんの比喩は比喩を越え出し、「ステーションとしての郵便ポスト」という場所論が展開できそうです。


【校正要素】
・「時刻表どおり」「先にも書いた通り」「その名の通り」
・「隣接しているをポストを見ても」脱字


ねるねるねるね」を悪くする

 谷川俊太郎とのコラボがあり、そこからフーリエ変換ならぬサイバー変換(サイバー菓子変換)があって、面白かったです。ポストがすごかっただけに、あっさりしていて「あ、それだけか」という感じはありました。

 

【校正要素】
・「もはや商品名なのか何なのか分からない単語も交じっていて、なんとも言えない気分になる」まちがいではないが名詞と副詞の『何』
・「文字列をじっと見つめていると」「多くみられる」


郵便次元について想う

 ユニークな世界設定に、面白いと思いました。デリダの『絵葉書』が好きなので、こういう話かなり好きです。

 

【校正要素】
・「この所在ない気持ちに整理を付ける」整理がつくの変形?(整理もつかず所在ない気持ちをどうにかするため)
・「所在ない気持ち」言いたいことはわかりますが、退屈で暇(手持ち無沙汰)ということです。
・「例にみてみよう」「見つかる」
・「私たち」「我々」
・「郵便次元について想う」「郵便物に、思いを馳せてみる」

 

押し入れと引き出しの関係

 いわゆる架空対義語をいくつか並べる感じです。

よって、厳密には東西線の反対は「北北東南南西線」かもしれない。さらに突き詰めると、「北北東微北南南西微南線」かもしれないのだ。「次は~大手町~、北北東微北南南西微南線は乗り換えです」、そんなアナウンスが聞こえてくる日も近い。(p.28)

 

 他のはあまり面白くありませんでしたが、これはかなりユニークでした。

 

いま底にあるかご

実は日常スタックが持つ問題は、地球上に住む全人類が一致団結して取り組まねばならない、世界共通の課題なのではないか。各スーパーが店内で独自のルールを作っているかもしれないけれど、そんなややこしいことをせずに、世界規模で新手法の研究開発に取り組むべきなのである。(p.33) 

 

 褒め言葉として受け取ってもらいたいのですが、すごくアホで感動しました。日常的なスタック構造をローカルな問題として認めるのではなく、グローバルな課題として取り組もうとする大きな姿勢に、ただただ胸を打たれました。

 

【校正要素】
・「ただいまキンドル版を絶賛発売中」間違いではありませんが『いま』と『中』で重複していて違和感があります

 

本屋の重さ

本屋に行くといつも考えるのは、「この本屋は一体どれくらい重いのだろう」ということだ。(p.35)


このように本屋とは、重さを詰め込んだ箱なのである。(p.36) 

 

待ち合わせのときに(以下略)

 

 いろんなひとがいるなあ、という感じです。


家に帰るための制御

 私もよく考えることで、似ているグラフを描くので、クスっとしました。

 

日常ゲーム

 風呂のゲームはクソつまらなそうで最高でした。プログラミングを覚えたときの気持ち、とてもよくわかります。


**********

 

 同人誌らしいというか、こういうひとはまだまだたくさんいるんだから、どんどん発表してほしい、という感じです。日常に停止ボタンを押して、ここってどうなってるのかな、と機構的に思考をめぐらす人物が、もっと出てくれば嬉しいです。斎藤さんはプログラミングをやるかたで、そういう機構的思考がナチュラルにできて、それが日常を切り取るときのよい切り口になっているなと感じました。情報系にせよ、テキストコラム系にせよ、続刊、期待しております。