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本質的にちくらぎ

文芸サークル「本質的にちくらぎ」のページです!

テキスト系同人誌(文章系同人誌)のレビュー企画|第〇号――私たちは本当に「感想」が欲しいのだろうか(L)

 創ったからには受け取った側の声を聞きたい――たとえどんなに内輪の盛り上がりで始まった閉鎖的な同人誌でも、その願いは大小おなじものだと言えるでしょう。値段をつけ、誰かの手に渡り、それがどのように読まれたのか、どんな想いを引き出したのか、それはもしかしたら流通させることの責任感であり、即売することの緊張感かもしれません。

 

 既読カード http://togetter.com/li/960057 や、書籍売上カード http://www.graphic.jp/lineup/offset/bookslip.php などを利用して、どうにか感想をもらおうとおもっても、やはりうまく機能しないこともしばしば。そもそも読者は読んでくれているのでしょうか。積ん読という闇魔法の餌食になっていることもありえます。

 

 同人誌の動向情報を見ても、「同人誌を創るには」「同人誌を売るには」「同人誌の価格は」「二次創作は違法か」「正しい表現の使いかた」みたいなものばかりが溢れ、「(1)感想をもらって、(2)それをどのように消化するか」ということが技術的に書かれておりません。これは自己満足に終始してしまいがちな同人業界を控えめに表していると言えます。

 

 あらゆる同人業界は、創り手が受け手でもあり、受け手が創り手であることが基本です。読者は著者であり、著者は読者ということで、純粋な読者も、純粋な著者も珍しいと言えます。そうなってくるとやはり、〈先に感想を言う〉ことで、コール・アンド・レスポンス、こちらの本を読んでもらえる可能性がひろがりますね。

 

 まず大事なのは「先に感想を言う」の障害を限りなくゼロに近づけることです。障害をあぶり出して見ましょう。

 

(1)まだ読んでないから感想を言えない。
(2)ようやく読んだけど随分前の同人誌だから今更感がある。
(3)「ふーん」以外の感想を言えるほどちゃんと読めてない。
(4)「ふーん」以外の感想を言えるほどクオリティが高くない。
(5)本誌の雰囲気が内輪的で感想を言いにくい。
(6)そもそも感想を求めているかわからない。
(7)感想はあるが正式な宛先がわからない。
(8)感想の宛先が遠い・複雑。
(9)感想を言うまでに入力しなければいけないことが多くて煩雑。
(10)感想を言ったけれど何のリアクションもないのでもう言わない。

 

 最も本質的に思える問題は、「同人誌が長続きしない」という一般的な状況問題です。同人誌をすぐに読むひともいるでしょうけれど、多くは大切に保管されます。そんなにすぐ読む「べき」ものがないからです。記念品であり、戦利品であり、それは逆に実用品ではないということですね。買ってから一年後に読めば早いほうで、一年というのは東京文フリ二回分(初夏・秋)、コミックマーケット二回分(夏・冬)ですよね。そのころまで同じ文芸誌が「活動している」あるいは「熱をもって本作りしている」ことが珍しく、感想を言っても仕方ないとか、今更だなという感じが出てきてしまいます。

 

 感想を言うためには、買ってからすぐに言う習慣をつけることが大事です。コスプレ・ポトレ界隈で言うところの「速報」をやろうと意気込めば、感想を言えるような気がしてくるのではないかと思います。もちろん手に入れた同人誌をすべてレビューするのは難しいですから、じぶんのなかで「名刺が可愛いから」とか、「売り子の愛想がよかったから」とか、「高かったから」とか、「表紙が気に入ったから」とか、などどうでもよさそうに思える基準をもうけて、それを信じて、優先順位をつけて感想を書いてゆくのが微熱的でよいと思います。

 

 次に問題なのは、「クオリティ」に関する問題です。買って読んだはいいけど、つまらないとか、誤字が多いとか、表記揺れが校正されてないとか、読みにくいとか、そういうことが頻繁に起きるのがアマチュア作家の世界です。感想を文章におこそうと思っても、悪口のような内容しか出てこない――そういうこともあります。でも、それも言っちゃいましょう。じぶんに「正直なレビュワー」というレッテルを貼って、感想プロジェクトの一環に無理やり組み込んでしまえば、なんてことはありません。あくまで「先に感想を言う」という目的のためにやっているので、あらゆるハイクオリティな同人誌のクオリティを褒めちぎるためにやっているわけではない、ということを肝に銘じる必要があるでしょう。

 

 問題の問題性を把握することで、だんだん、感想を言えるような気がしてきたのではないかと存じます。

 

 次の問題は「感想を求めているかわからない」というコミュニケーションの不可能性に関する問題ですが、ここも冷徹に「100%相手のためにレビューするのではなくて、50%はじぶんのためだから」と割り切ってみせることで乗り越えることができると思います。

 

 そして宛先問題もありますが、じぶんのブログでやるか、ツイッターで連続ツイートしてクラスタにまとめられるのを待つか、奥付に連絡先があれば送りつけても構わないと思います。ただ、レビューを参考にしたいひとなども出てくると思うので、どこかにアーカイブしてあるのがよいかもしれませんね。ブログで公表するのが、宛先無用でラクかもしれません。そのときはきちんと「同人誌名」を検索しやすくトップに持ってくるのがよいでしょう。

 

 「感想を言うためにどうすればいいか」なんて、読書感想文を強いられている小学生が聞いたら大人は頭がおかしいのかと首をかしげるであろう内容ですが、つまり(1)できるだけ速報を心がける。遅れたときはまだ活動中の同人誌か確認する――学生サークルだと伝統があるので長いけれど、中の人が入れ替わっている可能性が高い、(2)褒めるだけが感想ではないので、「ここがつまらなくて読むのやめてしまった」という内容でも価値のある感想になり得るからバシバシ書こう――50%相手のため、50%じぶんのため、(3)宛先が面倒ならブログで公開しよう、この三つを信条としておけば、かなりコンスタントに感想を書けるようになると思います。

 

 そして、これで「先に感想を言う」がクリアでき、ようやく「じぶんの文章にも感想をもらえた」としましょう。今度はどのように消化するか、が問題となります。具体的には、(ありがたいのはありがたいのですが)相手にするのがだるい感想もあります。

 

(1)的はずれなもの
(2)ちゃんと読んでないと思われるもの
(3)あまりにありきたりな賞賛に終始した挨拶みたいな内容のもの
(4)敵意や悪意のあるもの
(5)偏見や先入観によってひどく歪んだもの
(6)文章が下手でなにが言いたいのかわからないもの
(7)婉曲的に書いてくれたはいいけど回りくどすぎて意味不明なもの
(8)短すぎてどこのなにに関する話かわからないもの
(9)熱狂的なファンの熱狂的であることに終始している内容の乏しいもの
(10)重箱の隅だと思ってたことをメインとして取り上げられたもの

 

 などなど無視したくなるものがあって、感想をもらうからにはこういうものもハイペースに紛れ込んできます。問題を日本の教育や文化にひろげるのはやりすぎなので自重しますが、おおむね「感想」を言うのも言われるのも慣れていないので、いろんなすれ違いやギクシャクが発生します。ぜんぶダルいです。

 

 ここで立ち止まる必要があります――私は本当に感想が欲しいのだろうか。

 

本当に欲しいのは「まるで見返りを求めず私を好んでくれるファン」ではないのか。
本当に欲しいのは「耳心地のよい褒め言葉をくれるクラスタ」ではないのか。
本当に欲しいのは「私を作家だと認めてくれる愛すべき読者」ではないのか。
本当に欲しいのは「努力したところをちゃんと分かってくれる理解者」ではないのか。
本当に欲しいのは「私が挫けそうなときに励ましてくれる介護人」ではないのか。

 

 感想、要りますか。そんなもの欲しかったですか。ここはひとつ立ち止まらなければならない地点だと思います。既読カードの優れているところは、「既読に丸をすること」と「値引きになること」がメインになっていて、感想は双方にとって軽んじるべきものだという前提にあることです。感想は、「どうしても書きたいファン」だけが書く仕様になっているんですね。既読カードは、「次も買いたいですか」というアンケートを最も単純な形に置き換えた発明品なわけです。

 

 それを理解していないひとたちが、「値引きは要らない」と大量にコメントしておりましたが、そもそもの値段を高くしておけば値引きによる「適正価格」への影響はありません。値引きをすること自体が既読カードの意義を支えているわけですから、値引きは要らないという発想はじぶんの善意と戯れすぎたひとの発言だと言えるでしょう。

 

 何も考えない多くの作家が感想を欲しがり、よく考える作家は別に欲しがらなくて、よくよく考える作家が既読カードになるのではないかと感じます。そういう区分がどこまで有効かわかりませんが、今年の文フリや夏コミに流行りそうな既読カードの、悲惨な結果がなんとなくイメージできます。

 

 さて、それでもやっぱり感想というものが欲しいのだ、という大変態もいることでしょう。そちらのかたは、大丈夫です。アンケートや感想に誘導できるものをとにかく設置してください。QRコード、アンケート用紙、書いて送るだけの状態のはがき、グーグルスプレッドシート、既読カード、書籍売上カード、なんでもいいです。とにかく用意して、そのひとつひとつにしっかり返信できるブログやホームページを用意して、向き合うだけです。そして書き続けて、出し続けて、とにかく「感想をもらったからにはやめないこと」を信条にやるだけです。

 

 私も、感想を言うことが「文化」になるよう、ひたすら同人誌のレビューをしようと思います。どうかあなたも、ツイッターやブログで、いろいろな同人誌の――できれば我々「あみめでぃあ」の!――感想を発表してみてくださいませ。

 

http://togetter.com/li/776176